経済よりも大事なもの マタイの福音書4:4(聖書)

人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる。』(新改訳聖書 マタイの福音書4章4節)

これはイエスの言葉ですが、旧約聖書の申命記8章3節から引用したものです。イエスは自分が決して経済的なメシア(救い主)ではないことを表明したわけです。当時イスラエルの多くの人々は経済的に困窮していたので、彼らの必要と経済を満たせば人々からの支持率が上がるのは明白でした。それは今の世界の指導者を見ても分かります。国の経済が良くなれば、首相や大統領の支持率は上がります。しかし、イエスは経済も大事だけれど、一番ではないことを明らかにされました。もっと大事なことは心が満たされること、神の言葉によって生きていくことであると語ったのです。

人は食べなければ空腹になり体が弱くなります。同じように心にも栄養がいかないと、心が弱り、本当の意味で生きることができなくなってしまいます。だから経済的に恵まれていても自殺をする人が多くいるのだと思います。

イエスは経済的なメシア(救い主)になる誘惑を悪魔から受けましたが、これを大きなテーマにしているのが世界文学史上最高傑作の一つとされているドストエフスキー著「カラマーゾフの兄弟」中の「大審問官」のシーンです。大審問官とは宗教裁判の裁判官のことですが、間違った信仰を持った人を裁く裁判官です。これは無神論者であるイワンがキリスト教徒である弟アリョーシャに聞かせるイワン創作の叙事詩です。

フョードル・ドストエフスキー(1821年-1881年)/ロシアの作家

舞台は16世紀で、イエスがもう一度地上に現れます。その再び現れたイエスを捕らえたのがキリスト教会であって、そのキリスト教会の裁判官がなぜ今頃再びあなたはこの地上に現れたのか、と言って大審問官がイエスを尋問し裁くという物語になっています。なぜあなたは神のことばをパンよりも大事であると言ったのか。生きていくためにはパンの方が大事なのではないか、なぜあの時あなたは高尚なことを言ったのか、というわけです。そしてドストエフスキーは大審問官にこのように言わせます。「地上のパンと天上のパン、民衆の95%は地上のパンを優先する。パンのためなら自由なんて捨て去ってもいいと思っているはずだ。」大審問官は、人類のためと思ってパンを取りました。

結局多くの人は地上的パンを求めています。パンとは生活に必要な食物、衣類、住居を含めていいでしょう。いわゆる衣食住です。人間が生きる上で最低限必要なものです。資本主義社会において金銭はなくてはならないものでしょう。コロナで仕事を失えば、お金を稼ぐことができなくなり、食べるパンとご飯を買えなくなってしまいます。そう考えれば、雇用の問題、地上的パンが非常に重要であることが分かります。しかし、物質主義には限界があるのではないでしょうか。

もしかすると天上的パンは理想論に過ぎないのではないかと思えてくるかもしれません。ここで問われているのは、人間にとって大事なものは何であるか。本当に大切なものはパン(物質的なもの、経済)なのか、それとも自由(信仰)なのか、ということです。

大審問官がパンを取ったのに対して、イエスは自由(信仰)を取ったわけです。しかし、イエスはパンを軽んじたわけでは決してありません。イエスより前の時代(旧約聖書時代)、イスラエルの民は40年間荒野で飢えて苦しみました。飢えることの大変さを知っている神が天からのマナ(パン)をもって奇跡的にイスラエルの民を養いました。そのような文脈の中で申命記8章3節の言葉が出てきます。その言葉をイエスは自分が荒野で悪魔から誘惑を受けている時に語ったのです。人はパンだけで生きるのではなく、神の口から出る一つ一つのことばによる。(マタイの福音書4章4節)

生きる上で経済と心の両方が大事なのは間違いありません。どちらが欠けても生きていくことは難しいです。ドストエフスキーも19世紀ロシアで貧しい人が多くいるのを見ながら生きている中で揺れ動いたと思います。しかし、ドストエフスキーも天上のパンの方が重要であると考えたことでしょう。「大審問官」の最後でイエスが大審問官の意見に反駁せずに無言でキスをしていることから想像できます。そして大審問官はイエスを釈放して物語は終わります。

カラマーゾフの兄弟の中に記されています。「何のために生きるのかと言う確固たる意識がなければ、そのまわりにたとえパンの山を積まれても、人間はこの地上にとどまるよりは、むしろ自殺の道を選ぶに違いない。

現在、世界では1年間に6億9千万人がパン(ご飯)を満足に食べられない飢えの状態にあるとみられています。今年のノーベル平和賞は、飢える人のいない世界を目指して食糧支援を続ける国連の機関である世界食糧計画(WFP)におくられました。人々の雇用を守る事、貧しい人々を支援する事はとても大事です。特にコロナ禍の時はそうだと思います。しかし、経済が満たされただけでは、人が生きていけないのも事実ではないでしょうか。神の口から出る一つ一つの言葉である聖書のことばは現代人にも生きる力を与えてくれます。

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投稿者:canaan

埼玉県で10年間&北海道で10年間牧師の働きをしました。現在は神奈川県の教会で協力牧師をしています。私自身が様々なことば(特に聖書のことば)で力づけられてきたので、希望に満ちたことばをお伝えしたいと願っています。I used to be a pastor in Saitama prefecture for 10 years and Hokkaido for 10 years. Now I am a cooperating pastor in Kanagawa prefecture. I myself have been empowered by various words(especially Bible ), so I would like to tell the hopeful words.