「苦悩を突き抜ければ、歓喜に至る。」(ベートーヴェン)
ベートーヴェンは1770年12月16日に生まれました。今日でちょうど生誕250年になります。ベートーヴェンは様々な苦悩を体験し、運命に翻弄されました。最大の苦悩は耳が聞こえなくなってきたことで、音楽家&作曲家としては致命的なことに思えます。
彼の人生のターニングポイントになったのは、1802年31歳の時でした。絶望の危機に瀕し、破滅しそうになり、自ら命を絶とうとして遺書を書きました。しかし、その遺書がベートーヴェン自身への手紙となり、彼は勇気を振り絞って再スタートを決意したのです。音楽に人生を捧げ、音楽の力を信じたベートーヴェンの意志の強さを見ることができます。
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770年-1827年)
彼は絶望の危機を突破しました。彼は運命に必死に抵抗し、不屈さを発揮し、この危機を乗り越えたのです。困難に打ち勝つことができました。そして次々に名曲を生み出していったのです。
自殺を思いとどまった翌年1803年にできた『第二交響曲』について、作家ロマン・ロランが「ベートーヴェンの生涯」で書いています。「意志の力が決然として勝を制しつつあることが感じられる。抗い難い一つの力が悲しい想いを吹き払う。生命の奔騰がこの作品の終曲(フィナーレ)を昂揚させる。ベートーヴェンは幸福でありたいと望んでいる。彼は自分の疾患を不治だとは信じたくない。彼は快癒をのぞんでいる。愛を望んでいる。彼は希望に溢れている。」
ロマン・ロランは言っています。「もしも人がベートーヴェンを心理的に把握しなかったら、人は決してベートーヴェンを理解しないだろう」と。死を決意するほどの絶望感に打ちひしがれたベートーヴェンが、明るい躍動感といのちに溢れた曲を書いたのです。これは驚きです。
その後も彼は、ラズモフスキー弦楽四重奏曲(2本のバイオリン、ビオラ、チェロ)、ピアノだけで演奏されるピアノソナタ<悲愴><月光><熱情>、ピアノ三重奏曲<大公>(ピアノ、ヴァイオリン、チェロ>、第三交響曲<英雄>、第六交響曲<田園>、第九交響曲などの名曲を次々に生み出していきます。
その中でも最大と言われるのが「第五交響曲<運命>」です。今までの交響曲では使われなかったピッコロ、トロンボーン、コントラファゴットを使うなど新しい挑戦をしています。それまでのハイドン、モーツァルトの音楽を継承しつつ、交響曲の完成形(究極の姿、頂点)へと至ったと評価されている作品です。「苦悩を経て歓喜へ至る、運命の扉を開いていく」とても力強い曲ではないでしょうか。苦悩したからこそ行きつくことができた境地だったのだと思います。
病という苦難を通った作家の三浦綾子さんは書いています。「今まで振り返ってみて、大きな不幸と思われることが、実は大切な人生の曲がり角であったと、思われてならない。」またこうも言っています。「苦難の中でこそ、人は豊かになれる。」
聖書にはこのように書かれています。「彼(アブラハム)は望みえないときに望みを抱いて信じました。」(ローマ人への手紙4章18節) 私たちの人生にたとえ苦難があったとしても、いつか歓喜へと至る、と望みを抱いて歩んでいきたいものです。
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