天使とはどのような存在なのでしょうか? 聖書で天使について書かれている箇所を見ながら探っていきましょう。神が天使を創造されました。天使は神の栄光を映し出す存在です。ですから、天使が目に見える形で人間にあらわれる時、人々はその輝きの前に驚き、畏れ、ひれ伏しました。でもあくまで天使は神に創造された被造物です。さて天使がどのような存在であるかを見ていきましょう。
1)天使はいつ創造されたか?
天使創造の記述は創世記1章と2章にありません。なぜなら、天使が創造されたのは、天地が創造される前だったからです。聖書の一番最初の言葉は、初めに、神が天と地を創造した。(創世記1章1節)ですが、その前に天使は神によって創造されていました。
その根拠となる聖書の言葉が、ヨブ記38:7に出てきます。このように書かれています。そのとき、明けの星々が共に喜び歌い、神の子たちはみな喜び叫んだ。 ここでの文脈は、天地創造の描写です。神が創造した世界の美しさを賛美し、神による天地創造を喜んだのは人間ではなく天使たちでした。
聖書で天使を表現する時に使われる言葉がいくつかあります。旧約聖書でも新約聖書でもそのまま御使い、天使として表現されることがほとんどですが、時々象徴的な言葉が用いられる時があります(天使についての言及が、旧約聖書では108回、新約聖書では165回あります)。ここでは天使が「星」と描写されています。黙示録1章20節を見ると、星が御使いのことをあらわしていると分かります。わたしの右の手の中に見えた七つの星と、七つの金の燭台について、その秘められた意味を言えば、七つの星は七つの教会の御使いたち、七つの燭台は七つの教会である。
ヨブ記38:7の星々は複数ですから、複数の天使たちです。また文脈によっては「神の子」も天使のことをあらわす場合があります。聖書を読む時に最も大事なのは、文脈で判断することです。
ヨブ記1:6にはこのように書かれています。ある日、神の子らが主の前に来て立ったとき、サタンも来てその中にいた。 ここの文脈は天上での会議ですが、神の子ら、すなわち天使たちが神の前に立っていたわけです。
天使創造の記述は、詩篇148:2,5にあります。
主をほめたたえよ。すべての御使いよ。主をほめたたえよ。主の万軍よ(2節)。彼らに主の名をほめたたえさせよ。主が命じて、彼らが造られた(5節)。
彼らとは、すべての御使いたち、天使たちのことです。
答え:天使は天地創造の前に創造されました。
2)天使はどのような形を持っているのか?
天使は霊的な存在です。人間のように肉体を持っていないので基本的には目に見えません。しかし、神と違って遍在することはできないので、一つの場所にいることしかできません。
御使いはみな、仕える霊であって、救いの相続者となる人々に仕えるために遣わされたのではありませんか。(へブル人への手紙1章14節)
しかし、人間に現れる時には、目に見える姿をとって現れることがあります。天使ガブリエルはイエスの母マリヤに見える形で現れました。御使いガブリエルが、神から遣わされてガリラヤのナザレという町のひとりの処女のところに来た(ルカの福音書1章26節)。受胎告知です。
『受胎告知』レオナルド・ダ・ビンチLeonardo da Vinci
ウフィツィ美術館(イタリア・フィレンツェ) 1472年頃
ちなみに天使には性別はありません。ただ人間のような形をもって姿をあらわす時は男性です。また天使は性別がないせいでしょうか、肉体がないからでしょうか、結婚をしません。
イエスが言いました。「復活の時には、人はめとることも、とつぐこともなく、天の御使いたちのようです。」(マタイの福音書22章30節) ただ、堕天使(悪霊)たちは人間の女性と結婚したと思われます(創世記6章2節)。その結果、ネフィリムという超人(七十人訳では巨人)が生まれました(創世記6章4節)。
答え:天使は霊的な目に見えない存在です。人間のように目に見える肉体を持っていません。
3)天使の数はどれくらいいるのか?
もの凄い数の天使が存在します。イエスは十字架に架けられるために捕らえられた時、「わたしが父にお願いして、十二軍団よりも多くの御使いを、今わたしの配下に置いていただくことができないとでも思うのですか」(マタイの福音書26章53節)と言われました。ローマの「軍団」は、1軍団6,000人で編成されていたので、6,000人×12軍団で合計72,000人です。72,000の天使をすぐに呼ぶことができるとイエスは話されたのです。
黙示録5章11節にはこのように書かれています。私は、御座と生き物と長老たちとの回りに、多くの御使いたちの声を聞いた。その数は万の幾万倍、千の幾千倍であった。万の万倍は、億です。どんなに少なくとも1億はいるということです。
またへブル人への手紙12章22節にはこのように記述されています。しかし、あなたがたは、シオンの山、生ける神の都、天にあるエルサレム、無数の御使いたちの大祝会に近づいているのです。
天使は死にませんし、結婚もしないので、数が増減することはありません。
答え:数えきれないほど膨大な無数の天使がいます。
4)天使に階級はあるのか?
詳しくは分かりませんが、天使には階級と役割があると思われます。
①ケルビム(複数形、単数ケルブ) 神の最も近くにいる天使たち
ヒゼキヤは主の前で祈って言いました。「ケルビムの上に座しておられるイスラエルの神、主よ。ただ、あなただけが、地のすべての王国の神です。あなたが天と地を造られました。」(列王記第二 19章15節)
また預言者エゼキエルは幻を見ました。主の栄光がケルブの上から上り、神殿の敷居に向かうと、神殿は雲で満たされ、また、庭は主の栄光の輝きで満たされた。そのとき、ケルビムの翼の音が、全能の神の語る声のように、外庭にまで聞こえた。(エゼキエル書10章4,5節)
ケルビムは神の栄光を宣言し、神の臨在(至聖所)を護衛する天使たちです。またエデンの園をも守りました。
こうして、神は人を追放して、いのちの木への道を守るために、エデンの園の東に、ケルビムと輪を描いて回る炎の剣を置かれた。(創世記3章24節)
②セラフィム(複数形、単数セラフ) 神を賛美する天使たち
セラフィムがその上に立っていた。彼らはそれぞれ六つの翼があり、おのおのその二つで顔をおおい、二つで両足をおおい、二つで飛んでおり、互いに呼びかわして言った。「聖なる、聖なる、聖なる、万軍の主。その栄光は全地に満つ。」(イザヤ書6章2,3節)
翼で顔を覆っていたのは謙遜をあらわしているのでしょう。セラフィムはイザヤ書6章にしか出てきません。
③天使長 御使いのかしらたち
ミカエル 御使いのかしらミカエルは、モーセのからだについて、悪魔と論じ、言い争ったとき、あえて相手をののしり、さばくようなことはせず、「主があなたを「戒めてくださるように」と言いました。(ユダの手紙9節)
ミカエルは戦いのための天使です。天に戦いが起こって、ミカエルと彼の使いたちは、竜と戦った。それで、竜とその使いたちは応戦したが、勝つことができず、天にはもはや彼らのいる場所がなくなった。(黙示録12章7,8節) 旧約聖書のダニエル書10章にもミカエルは登場します。
『堕天使を深淵に落とす大天使ミカエル』ルカ・ジョルダーノ 美術史美術館(ウィーン)/1655年頃
よく神vs悪魔、天使vs悪霊(堕天使)の構図で言われますが、神は別格で、神vs悪魔にはなりません。悪魔に対峙するのは天使長ミカエルで十分なのです。
ガブリエル ガブリエルがダニエルにあらわれると、ダニエルは畏れおののき、ひれ伏し、意識を失い、地に倒れてしまいました(ダニエル書8章15-27節)。このガブリエルは受胎告知のためにマリヤに遣わされました(ルカの福音書1:26)。またガブリエルはバプテスマのヨハネの父親であるザカリヤにもあらわれています(ルカの福音書1:19)
④その他の天使たち
答え:天使には階級があり、組織化されていると見ることができます。
5)天使の働きは何か?
①神をほめたたえる
御使いたちはみな、御座と長老たちと四つの生き物との回りに立っていたが、彼らも御座の前にひれ伏し、神を拝して、言った。「アーメン。賛美と栄光と知恵と感謝と誉れと力と勢いが、永遠に私たちの神にあるように。アーメン。」(黙示録7章11,12節)
御使いの中心的な働きは賛美礼拝にあります。天地創造をされた時には創造主である神をほめたたえ、イエスが誕生した時は羊飼いにあらわれ、「いと高き所に、栄光が、神にあるように。地の上に、平和が、御心にかなう人々にあるように。」(ルカの福音書2章14節)と神を賛美しました。そして現在進行形で天では天使による神への礼拝が捧げられています。
②神のメッセージを伝える
ヘブル語の「マルアク」でもギリシャ語の「アンゲロス」でも、御使いと訳されている語は「使者」(メッセンジャー)を意味します。イエスの復活を知らせてくれたのも天使(まばゆいばかりの衣を着たふたりの人)たちでした。「あなたがたは、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。」(ルカの福音書24章5節) マリヤに受胎告知をしたのも神からのメッセージを託され遣わされた天使によるものでした。
③神のご計画を実行する
十字架に架かる直前、ゲツセマネの園で祈っておられたイエスを力づけました。すると、御使いが天からイエスに現れて、イエスを力づけた。イエスは、苦しみもだえて、いよいよ切に祈られた。汗が血のしずくのように地に落ちた。(ルカの福音書22章43、44節) イエスは死を目前に恐れを感じ、悲しみもだえました。神のご計画はイエスが十字架に架かり、人類の罪の身代わりのために死なれることでした。そうでなければ、救いは成し遂げられません。人間に罪の赦しは与えられません。イエスもそのことをよく知っておられました。しかし、人間イエスは祈りの中で苦しみ格闘したのです。その時にイエスの祈りを助けたのが御使いでした。
④イエスを信じるキリスト者を助ける
福音を伝えたために牢獄に入れられていたペテロが御使いによって助け出されました。すると、突然、主の御使いが現れ、光が牢を照らした。御使いはペテロのわき腹をたたいて彼を起こし、「急いで立ち上がりなさい」と言った。すると、鎖が彼の手から落ちた。(使徒の働き12章7節) 今でも天使たちはキリスト者たちを助けようと動き回り、働いてくれています。私たちは天使の助けと介入を期待することができます。ペテロ以外にも天使の介入によって危機的な状況から救い出された人たちの記述が聖書には出てきます。
⑤人の救いを願っている
あなたがたに言いますが、それと同じように、ひとりの罪人が悔い改めるなら、神の御使いたちに喜びがわき起こるのです。(ルカの福音書15章10節) 人が悔い改めて救われることを神は願っておられますが、天使たちも神と同じ思いを持っています。天使に感情があることが分かります。
⑥終末に神のわざ&神の裁きを遂行する
人の子は大きなラッパの響きとともに、御使いたちを遣わします。すると御使いたちは、天の果てから果てまで、四方からその選びの民を集めます。(マタイの福音書24章31節) 黙示録8,9章にはラッパを吹き鳴らす天使たちが描写されています。天使は神の創造から新創造まで、様々な場面で登場し、神の代理人としての役割を果たします。
⑦イエスの再臨に参与する
人の子が、その栄光を帯びて、すべての御使いたちを伴って来るとき、人の子はその栄光の位に着きます。(マタイの福音書25章31節) イエスの誕生、十字架、復活、昇天(使徒の働き1章9~11節)に積極的に関与した天使たちは、イエスの再臨の時にも当然参与します。
答え:様々な働きがありますが、主なものは神への礼拝と神のメッセージを伝えること、そして神の代理人として神のご計画を実行することです。
6)気をつけるべきことは何か?
あまりにも神々しいので使徒ヨハネは天使を拝もうとしてしまいましたが、天使は「やめなさい。、、、神を拝みなさい。」(黙示録22:8,9節)と言いました。天使は被造物なので拝んではいけません。礼拝の対象ではありません。礼拝されるべきお方は、創造主である神だけです。
悪い天使、すなわち堕天使である悪魔は「自分を拝みなさい」と言います。しかし、良い天使は、決して自分を拝むようにとは言いません。そこが大きな違いです。良い天使は自分ではなく、自分を遣わされた神に目を向けさせようとします。あくまで自分たちは神の代理者に過ぎないことをわきまえています。彼らの特徴は謙遜です。悪魔の特徴は高慢です。
ちなみに、天使の働きと聖霊の働きは違います。天使は被造物ですが、聖霊は創られた存在ではなく永遠の神ご自身です。第3位格の神です。ビリーグラハムはこのように書いています。「天使は、人々の内に住まない。しかし聖霊は、人々を再生なさった時に、彼らに証印し、内住なさる。聖霊は全知であり、遍在し、全能であられる。天使は人々よりは力があるが、神ではなく、神の属性を有していない。」
答え:天使は被造物であって礼拝の対象ではありません。礼拝されるべき唯一のお方は創造主である神だけです。
※天使の存在は、私たちと無関係ではありません。大いに関係があると言っても過言ではありません。なぜなら、このように書かれているからです。御使いはみな、仕える霊であって、救いの相続者となる人々に仕えるために遣わされたのではありませんか。(へブル人への手紙1章14節)
天使は、キリスト者に仕えるために神から遣わされているのです。ですから、天使の存在と天使の働きを知ることによって、更に私たちの生活は支えられ、危険から守られるようになります。聖書に書かれています。まことに主は、あなたのために、御使いたちに命じて、すべての道で、あなたを守るようにされる。彼らは、その手で、あなたをささえ、あなたの足が石に打ち当たることのないようにする。(詩篇91:11、12)
天使は祈りの対象ではありませんが、神様に「天使を遣わしてください」と祈ることはできます。ぜひ祈ってみてください。その効果は大きいと私は信じています。
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