「資本主義は、成功することによって生き延びることはできない」(ヨーゼフ・シュムペーター著 「資本主義・社会主義・民主主義」)
資本主義は21世紀においても経済体制で一番優れたものであり続けることができるのでしょうか。フランシス・フクヤマ氏は、冷戦でアメリカがソ連に勝利したことで、資本主義が共産主義に勝ち、歴史が終わったと表現しました。資本主義が歴史上最高の形態になったので、20世紀末には資本主義が永続的に続くような印象を人類は持ったのだと思います。
しかし、21世紀に入って、状況は大きく変わりました。同時多発テロ、リーマンショック、東日本大震災、原発事故、コロナなど、歴史は大きく動きました。現代の資本主義はどこへ向かっているのかを考える時に、2013年に出版されたトーマ・ピケティ著の「21世紀の資本」は欠かせません。カール・マルクスの「資本論」を意識しているのは間違いないでしょう。「21世紀の資本」は経済書としては異例の売れ行きを記録しました。
ピケティ氏は、膨大な資料を駆使して、このままでは格差は拡大する一方であることを示しています。彼はこの格差を是正するために、資産に対する世界規模での累進課税を提唱しています。ただ私たちが考えなければならないのは、そもそも資本主義というのは、自由な経済活動を提唱しているので、格差が生じるのは当然と言えば当然であるいうことです。それが不平等で格差を生じさせてはいけないという考えの元に進められていたのが、社会主義でした。20世紀にフランシス・フクヤマ氏が言うように、私も一つの歴史が終わったと感じています。歴史的に社会主義と共産主義を推し進めるとどうなるかというのは、20世紀の歴史がすでに証明したと思っています。しかし、このまま本当に資本主義を推し進めていくだけで良いのか、疑問が残ります。共産主義に向かうのは絶対に違うけれど、資本主義はこのままで良いのか、、、
資本主義を継続していくなら、経済格差は必ず生まれます。格差は仕方がないとしても、貧困に対しては道徳的に考えて政府が介入するべきではないか、という議論があります。世界には本当に貧しい人々がいます。私たちは助けの手を差し出すべきでしょう。このようになっていくと経済の問題ではなく、政治の問題になっていきます。様々な学問を縦横に行き来し、また統合して考える力が21世紀には求められているように思います。
20世紀半ば、ヨーゼフ・シュムペーターは著書「資本主義・社会主義・民主主義」の中で、資本主義は生き延びることができるのか、という問いと向き合っています。「資本主義は失敗し、崩壊する」と言ったマルクスに対しては、「資本主義は成功する」と言いましたが、「資本主義は生き延びることはできない」と予言的に書いています。マルクスが「資本主義は失敗することによって生き延びることができない」と言ったのに対して、シュムペーターは「資本主義は成功することによって生き延びることはできない」と20世紀半ばに言いました。非常に含蓄のある言葉ではないでしょうか。考えさせられます。
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