1 さて、神である主が造られたあらゆる野の獣のうちで、蛇が一番狡猾であった。蛇は女に言った。「あなたがたは、園のどんな木からも食べてはならない、と神は、ほんとうに言われたのですか。」2 女は蛇に言った。「私たちは、園にある木の実を食べてよいのです。3 しかし、園の中央にある木の実について、神は、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と仰せになりました。」(創世記3章1-3節)
蛇は悪魔をあらわしています。ちょうど小羊がイエス・キリストをあらわすようにです。その翌日、ヨハネは自分のほうにイエスが来られるのを見て言った。「見よ。世の罪を取り除く神の小羊。」(ヨハネの福音書1章29節)ヨハネの黙示録にはこのように書かれています。さて、天に戦いが起こって、ミカエルと彼の使いたちは、竜と戦った。それで、竜とその使いたちは応戦したが、勝つことができず、天にはもはや彼らのいる場所がなくなった。こうして、この巨大な竜、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれて、全世界を惑わす、あのふるい蛇は投げ落とされた。彼は地上に投げ落とされ、彼の使いどもも彼とともに投げ落とされた。(黙示録12章7-9節)
蛇が悪魔というわけではなく、悪魔が蛇を利用したと言えるでしょう。蛇がしゃべったのは、蛇の中に悪魔が入ったからです。ヘブル語や英語では、狡猾という言葉は必ずしも悪い意味ではないそうです。でも蛇の狡猾さが悪魔に利用されたと言えます。狡猾さは、相手を選んだことにもあらわれています。エバは、神から直接命令を聞いていませんでした。アダムから聞いただけだったのです。神はアダムだけの時に言われました。神である主は人に命じて仰せられた。「あなたは、園のどの木からでも思いのまま食べてよい。しかし、善悪の知識の木からは取って食べてはならない。それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ。」(創世記2章16,17節)神はアダムとエバの二人に語ったのではなく、アダムだけに語ったのです。この命令をアダムが受けた時、エバはまだ創造されていませんでした。
エバはアダムから聞いて神の命令を知っていただけで、直接神の言葉を聞いたアダムとは違って、受け止め方が弱くなっていたのです。そこを悪魔は狙ったのでしょう。悪魔はアダムではなくエバを選んで、エバに語ります。
ミケランジェロ/原罪(システィーナ礼拝堂天井画)
蛇は呪われて、地をはうようになってしまいましたが(創世記3:14)、それ以前は足があり美しい被造物であったと想像することができます。悪魔は恐ろしい姿では人を誘惑しません。もしそうであったならば、エバは恐ろしくなって逃げ出したことでしょう。悪魔は巧妙に私たち人間を誘惑してきます。サタンさえ光の御使いに変装するのです(コリント人への手紙第二 11章14節)。
「あなたがたは、園のどんな木からも食べてはならない、と神は、ほんとうに言われたのですか。」(1節)とエバに聞く悪魔の質問の仕方にも陰険さを感じます。これは暗に、神は何とけちな者なのか、というような印象を与えようとしているのだと思います。でも実際は神は「園のどんな木からでも思いのまま食べてよい」(創世記2:16)と仰っていたのです。ただ一つの禁止を伝えていただけでした。しかし、善悪の知識の木からは取って食べてはならない。それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ(創世記2:17)。
エバは悪魔と会話をはじめてしまいました(2節)。ここにエバの失敗の原因があります。神に祈り、助けと導きを求めるべきでした。また夫のアダムに相談すれば、このようにはならなかったかもしれません。ところがエバは自分だけで判断し、蛇と論戦を交わしてしまったのです。女は蛇に言った。「私たちは、園にある木の実を食べてよいのです。しかし、園の中央にある木の実について、神は、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と仰せになりました。」(2,3節)
ここでエバはいくつかの過ちを犯しています。神は園の中央にある二つの木のうち、善悪の知識の木だけを禁じました(創世記2:17,3:3)。また神は「それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ」(2:17)と言われた言葉を「あなたがたが死ぬといけないからだ」(3節)とみことばを割り引き、軽く考えました。みことばに付け加えてもいけませんし、みことばを削る行為もしてはいけません。私があなたがたに命じることばに、つけ加えてはならない。また、減らしてはならない。私があなたがたに命じる、あなたがたの神、主の命令を、守らなければならない。(申命記4章2節)
悪魔はエバを誘惑しましたが、現代においても私たちを誘惑し、人生を破壊しようと働いていることを知らなければならないでしょう。一番の模範はイエス・キリストです。悪魔はイエスをも誘惑しましたが(マタイの福音書4章1-11節)、第二のアダムであるイエスを誘惑するのには失敗したのです。イエスは悪魔の誘惑に勝利されました。どのように勝利されたのでしょうか。聖書の言葉によってです。「聖書にはこう書いてある」と、旧約聖書のみことばを引用し、悪魔に勝利されました。イエスは決して悪魔と口論や議論をしませんでした。なぜなら、悪魔は口達者だからです。エバはその点で失敗したのです。イエスは旧約聖書を読み学んでいたので、みことばがすぐに心に浮かび、口から出て来たのです。私たちも聖書の言葉を読んで聞くことによって、みことばを蓄え、暗唱し、告白し、宣言することによって、悪魔の誘惑を退けることができます。これが勝利の秘訣です。
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